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東京地方裁判所 昭和42年(特わ)22号 判決 1967年7月12日

本店所在地

東京都台東区上野桜木町四七番地

有限会社戸村商事

(右代表者代表取締役 戸村英雄)

本籍

東京都台東区上野桜木町四七番地

住居

同都同区上野桜木町四二番地

有限会社戸村商事代表取締役

戸村英雄

大正七年一月一四日生

右被告人等に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官宮本喜光出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告有限会社戸村商事を罰金一、〇〇〇万円に、被告人戸村英雄を判示第一および第二の罪につき懲役四月に、判示第三の罪につき懲役二月に各処する。

被告人戸村英雄に対し、本裁判確定の日からそれぞれ二年間、右各懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告有限会社戸村商事は、東京都台東区上野桜木町四七番地に本店を置き、旅館業を主たる営業目的としなおこれに併せて手形割引業をも営んでいた資本金五〇〇万円の有限会社であり、被告人戸村英雄は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、同被告人は右会社の業務に関し旅館収入および手形割引料を除外して薄外預金を設定する等して所得を秘匿したうえ、

第一、 昭和三八年一月一日より同年一二月三一日に至る事業年度において、被告会社の実際所得金額は別表一修正貸借対照表(昭和三八年一二月三一日現在の分)記載のとおり一、二七七万八、六七三円であつてこれに対する法人税額が五一四万五、九一〇円であるのにもかかわらず、昭和三九年二月一七日東京都台東区蔵前二丁目八番一二号所在の所轄浅草税務署において同署長に対し、所得金額は一三八万一、五六二円でありこれに対する法人税額は四五万五、八九〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額四六九万〇、〇二〇円については法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱した、

第二、 昭和三九年一月一日より同年一二月三一日に至る事業年度において、被告会社の実際所得金額は別表二修正貸借対照表(昭和三九年一二月三一日現在の分)記載のとおり四、四七五万七、二五二円であつてこれに対する法人税額が一、八〇五万〇、七六〇円であるにもかかわらず、昭和四〇年二月一六日、前記浅草税務署において同署長に対し、所得金額は三五三万五、四八五円でありこれに対する法人税額は一三一万一、二四〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額一、六七三万九、五二〇円については法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱した、

第三、 昭和四〇年一月一日より同年一二月三一日に至る事業年度において、被告会社の実際所得額は別表三修正貸借対照表(昭和四〇年一二月三一日現在の分)記載のとおり四、四四五万四、九二九円であつてこれに対する法人税額が一、七六四万九、二四〇円であるにもかかわらず、昭和四一年一月二四日、前記浅草税務署において同署長に対し、所得金額は一、〇三〇万五、六九八円でありこれに対する法人税額は三九八万二、〇一〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額一、三六六万七、二三〇円については法定の納付期限内(昭和四一年二月二八日)に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱した

ものである。

(証拠の標目)

(一)、全般について

一、 登記官坂本正夫作成の登記簿謄本

一、 新沼信男、新家友子の各大蔵事務官に対する質問てん末書並びに検察官に対する供述調書

一、 杉山愛子、永塚喜美子、小宮しづ子、戸村悦子、石黒巳佐尾の各大蔵事務官に対する質問てん末書(但し、戸村悦子の分は二通)

一、 大蔵事務官上川路正一作成の法人税額計算書三通

一、 押収にかかる売上入金帳一冊(昭和四二年押第六〇七号の一)、売上メモ等三級(同号の二)、売上日計表二綴(同号の三)、総勘定元帳三綴(同号の五、六、七)、日報綴七綴(同号の一四)並びに法人税決議書綴一冊(同号の二四)

一、 被告有限会社戸村商事代表者戸村英雄作成の上申書二通

一、 被告人戸村英雄の大蔵事務官に対する質問てん末書四通並びに検察官に対する供述調書三通

一、 被告人の当公判廷における供述

(二)、別表一ないし三の各修正貸借対照表の勘定科目のうち

(1)、普通預金について(別表一ないし三を通じ=以下特記せざるものはすべて一ないし三を通じ、二および三又は三と記載せるものは別表二および三又は別表三に関係するものであることを示す)

一、 戸村きくの大蔵事務官に対する質問てん末書

一、 日本相互銀行浅草支店長田辺勝保作成の証明書(記録第八五号=以下No.八五の如く略記)

一、 平和相互銀行浅草橋支店長服部政男、三菱信託銀行浅草橋支店長井上能邦作成の証明書(但し、井上能邦作成分は二通)(No.八六、同八七および同八八)

一、 富士銀行千束町支店長山田英男作成の証明書二通(No.九三および同九四)

(2)、定期預金、通知預金および定期積金について

一、 戸村きくの大蔵事務官に対する質問てん末書

一、 日本相互銀行浅草支店長田辺勝保作成の証明書(No.八四)

一、 平和相互銀行浅草支店長服部政男作成の証明書(No.八六)

一、 中央信用金庫かつぱ橋支店長福岡考介作成の証明書(No.八九)

一、 富士銀行千束町支店長山田英男作成の証明書(No.九二)

(3)、不渡手形について

一、 戸井清、比護三郎の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一、 押収にかかる決済済約束手形綴三冊(前同号の一二)並びに雑記帳二冊(同号の一五)

(4)、手形貸付金および前受割引料について、

一、 大蔵事務官作成の手形割引関係調査書類

一、 鈴木六男、橋口雅之、吉田修、戸井清、辻豊次、福元園枝、飯田惣一郎、石部考信の各大蔵事務官に対する質問てん末書(但し、辻および福元分は二通)

一、 株式会社村上商店(村上鋳之助)、服部幹生、株式会社相銀商会(鳥飼誠之助)、明和鋼業株式会社、大日ステンレス株式会社(菊地政)並びに安川工業株式会社(安川玲次郎)各作成の上申書

一、 半沢昭一の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(昭和四一年八月四日付)並びに検察官に対する供述調書

(5)、貸付金について、

一、 戸村きくの大蔵事務官に対する質問てん末書

一、 石黒章、東海興業株式会社(小林秀雄)各作成の上申書

一、 幸袋鉱業株式会社(屋敷李雄)作成の上申書二通

(6)、立替金(二、三)について

一、 石井敬二の大蔵事務官に対する質問てん末書

(7)、建物について

一、 有限会社中静工務店(平本芳人)作成の上申書

一、 佐藤ふき子の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、 押収にかかる建築費関係綴一冊(前同号の四)並びに土地家屋貸借関係書類一冊(同号の八)

(8)、建物附属設備について

一、 半沢昭一の大蔵事務官に対する質問てん末書二通並びに検察官に対する供述調書

一、 有限会社篠崎電機工業(篠崎恭四郎)、旭電業株式会社(富田旭)、安川工業株式会社(安川玲次郎)並びに大成温調工業株式会社(畑宏充)各作成の上申書

一、 山浦留雄の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、 押収にかかる名刺一袋(前同号の一六)、領収証等綴一冊(同号の一七)、工事請負契約書等一袋(同号の一八)、鶯谷本館駒込支店関係書類一綴(同号の一九)並びに領収証控四冊(同号の二三)

(9)、機械設備について、

一、 有限会社アサヒ製作所総本社(北川文治)並びに光洋インターナショナル株式会社(大沢秀峰)各作成の上申書

一、 比護三郎の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、 押収にかかる領収証等綴一冊(前同号の一七)並びに鶯谷本館駒込支店関係書類一綴(同号の一九)

(10)  造作並びに備品について、

一、 太田政志の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、 ケーアイ電気工業株式会社(伊藤叔子)、株式会社満点製作所(星原寛史)、互興産業株式会社(鈴木定幸)、不二ネオン株式会社(鈴木房枝)、株式会社黒沢商店(永山愈)並びに毎日電機株式会社(斉藤百合子)各作成の上申書

一、 押収にかかる領収証等綴(三八年分)七五綴(前同号の一三)並びに領収証等綴一冊(同号の一七)

(11)  構築物(二、三)および前渡金(三)について、

一、 富士川機械株式会社(石井忠)作成の上申書

一、 押収にかかる名刺一袋(前同号の一六)並びに領収証等綴一冊(同号の一七)

(12)  土地について、

一、 堀江敏幸の検察官に対する供述調書

一、 稲江三男、古作武夫、高石慎並びに佐藤清美の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一、 有限会社小林水道工業所(小林三郎)、栄建設株式会社(豊田幸一)並びに富士川機械株式会社(石井忠)各作成の上申書

一、 押収にかかる土地家屋賃貸借関係書類一冊(前同号の八)、千葉店関係書類一冊(同号の九)、契約書等二綴(同号の一〇)、不動産関係証書計二綴(同号の二〇、二一)並びに領収証等一綴(同号の二二)

(13)  借地権(二、三)について、

一、 佐藤ふき子の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、 押収にかかる建築費関係綴一冊(前同号の四)

(14)  建設仮勘定(三)について、

一、 石野清太郎の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、 株式会社石間工務店(稲垣栄次郎)作成の上申書

一、 押収にかかる千葉店関係書類一冊(前同号の九)並びに契約書等二綴(同号の一〇)

(15)  支払手形について、

一、 株式会社アサヒ製作所総本社(北川文治)並びに不二ネオン株式会社(鈴木房枝)各作付の上申書

一、 押収にかかる契約書等二綴(前同号の一〇)並びに領収通帳二冊(同号の一一)

(16)  借入金について

一、 堀内重太郎、吉村利治の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一、 堀江敏幸の検察官に対する供述調書

一、 日本相互銀行浅草支店長田辺勝保作成の証明書(No.八五)

一、 平和相互銀行浅草支店長服部政男、三井銀行雷門支店長川本省吾作成の証明書

一、 中央信用金庫、かつぱ橋支店長福岡孝介作成の証明書(No.二九)

一、 富士銀行千束町支店長山田英男作成の証明書(No.九五)

(17)  未払金について

一、 小川源商事株式会社(酒井幸子)並びに株式会社ヤンマー技研(松本三之助)各作成の上申書

被告人戸村英雄は、昭和四〇年一月二八日、台東簡易裁判所にかいて道路交通法違反の罪により略式命令をもつて罰金一万円に処せられ、この裁判は同年三月一八日確定した。右の事実は検察事務官作成の前科調書並びに被告人戸村英雄の当公判廷における供述によつて明らかである。

(法令の適用)

(一)、被告人戸村英雄の判示各所為中、第一および第二の事実はいずれも昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条によりその改正前の法人税法第四八条第一項に、第三の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法第一五九条第一項に各該当するところ前示確定裁判があつてこの罪と判示第一および第二の罪とは刑法第四五条後段の併合罪に該るので、同法第五〇条によりまだ裁判を経ない判示第一および第二の罪につきさらに処断すべく判示の各罪についてはいずれも所定刑中懲役刑を選沢し、判示第一と第二の罪とは刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をなし、それぞれその刑期範囲内において同被告人を判示第一および第二の罪につき懲役四月に、同第三の罪につき懲役二月に処し、諸般の情状を考慮のうえ刑法第二五条第一項を適用して本裁判確定の日からそれぞれ二年間、右各懲役刑の執行を猶予する。

(二)、被告有限会社戸村商事については、その代表者たる戸村英雄が同会社の業務に関して前記各違反行為をしたものであるから判示第一および第二の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により、その改正前の法人税法第五一条第一項に則りそれぞれ同法第四八条第一項の罰金刑を、また判示第三の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法第一六四条第一項に則り同法第一五九条第一項の罰金刑を科すべくしかして右各違反行為は刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内において同被告会社を罰金一、〇〇〇万円に処する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 近藤暁)

別表一 修正貸借対照表

有限会社 戸村商事 昭和38年12月31日 現在

<省略>

<省略>

別表二 修正損益計算書

有限会社 戸村商事 昭和39年12月31日 現在

<省略>

<省略>

別表三 修正貸借対照表

有限会社 戸村商事 昭和40年12月31日 現在

<省略>

<省略>

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